読書の森

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【感想】指出一正著「ぼくらは地方で幸せを見つける ソトコト流ローカル再生論」を読んで考えた地方と都会の関わり方。

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こんにちは、本貴典(ほんたかのり) @dokusho_moriです。

先日、「関係人口をつくる」という本を読みました。地方と都市との新しい関わり方について書かれた本です。
「関係人口をつくる」についての記事はこちらから
www.dokushomori.work


実は僕自身、東京出身で現在は熊本に拠点をおいている、といういわば「移住」した人なのですが、
若者を中心に「地方が面白い」という人が増えているように感じています。

なぜ地方が面白いのか、それを今回の、ソトコト編集長の指出一正さんの著書「ぼくらは地方で幸せを見つける ソトコト流ローカル再生論」を読んで納得したような気がします。

(111)ぼくらは地方で幸せを見つける (ソトコト流ローカル再生論)

(111)ぼくらは地方で幸せを見つける (ソトコト流ローカル再生論)

この本の内容ざっくりと

「都市」から「地方」、その先の「地域」へ。 経済優先、成長主義とは異なる軸で「地方」をとらえ、クリエイティブな暮らしやコミュニティ、幸せのカタチを模索する若者たちが増えている。 若きローカルヒーローたちのユニークな活動、彼らの新しい価値観を通して、地方再生の手がかりを語る一冊。 行政も注目する15の事例を紹介します。
「豊かな社会」の尺度が変わる。若者が主役!の新しいまちづくり。人口増加や経済効果重視の観光化ではなく、若い世代が中心となり、全国から人が集まるまちがある。未来への手ごたえを感じ、仲間を巻き込みながら、地元の底力を引き出す秘訣はなんなのか。「若者」×「ローカル」に学ぶ、暮らし方、働き方。

地方にどんな価値があるのか

本書で言われていることは、地方にある「関わりしろ」が1980〜1990年生まれの世代に響いているということ。

僕自身は2004年にmixiがそのサービスを始め、ソーシャルネットワークが日本に入ってきた当時は大学生。
ソーシャルネットワーク自体にも自然と触りながら、続くTwitterやFacebookにも抵抗感なく使用してきた世代。

そんな折、起こった2011年の東日本大震災。
ソーシャルネットワークの世界で支援の輪が広がるのが可視化され、ソーシャルネットワークの世界が「ソーシャルビジネス」的な意味合いでの「ソーシャル」にも使われてきたのを目の当たりにしてきました。

著者の指出一正さんが編集長をつとめるソトコトも、時代が進むにつれ、「スローフード」→「ロハス」→「ソーシャル&エコ」と価値観が変わってきているようです。

そんなソーシャル世代たちには、
地方は課題だらけであり、自分が入ることでその課題をなんとかできそうだという「関わりしろ」があるように見え、そこが魅力になります。


全国のローカルヒーローたち

本書でソーシャル世代たちの新しい地方の関わり方として紹介されているひとを、ローカルヒーローと呼んでいます。

パーリー建築

パーリー建築Facebookページ
歌いながら空き家を改修し、全国を旅する「パーリー建築」 | greenz.jp

パーティーをつづけながら使われなくなった建築を改修する建築集団。
これまでに、東京の渋谷、新潟の十日町などの物件を手がけています。

プロがきれいなものを作ってしまうというよりもm自分の手でつくりあげていくことで、身のまわりのものに対する想像力を得たかったといいます。
得意分野によって役割分担がされており、エンターテイメント担当、建築担当、農耕担当などに分かれています。
仲間と楽しむための場づくりをしているという点が特徴的です。

せっかく地方にきたのだから気の合う仲間と楽しいことがしたいという、いわばワンピース型ヒーローです。

ペンターン女子

からくわ丸の半島移住女子による "Pen.turn" 〜ペンターン女子の休日〜

ペンターンとは、
Pen.turn【名】:ペンターン。”Peninsula turn”の略。「半島移住(Iターン)」の造語。

三陸にある7000人の小さな漁村、宮城県 気仙沼市 唐桑町に移住した女子たちの活動。
地方には、チャレンジしろ、関わりしろが都会よりもあると気づいた女子たちが、古民家・唐桑御殿をシェアハウスしながら、漁に出たり、畑に行ったりしています。

それぞれが縁を感じて移住を決めたとのこと。自分たちになにができるかを考えて自然体で行動しているようにみえます。
なんとなく都会から地方への移住というと、シニアのセカンドライフなどのイメージがありましたが、いきいきとした女子がキラキラ感を見せているのがなんだか好感を持てます。

ペンターン女子のように、地縁や血縁でない、新たなルーツを探す人たちが増えていると本書では指摘されています。

四国食べる通信

http://taberu.me/shikoku/taberu.me

つくる人と食べる人、双方の想いをつなぐ新しい情報誌を始めます。『四国食べる通信』は、食べる情報誌です。瀬戸内海、四国山地、太平洋。彩りあふれる食材と風景を、つくる人の物語と共に隔月でお届けします。

2ヶ月に1度 「冊子+食材」が届く「四国食べる通信」
1号につき3,980円(消費税・送料込み)。

食べ物は人と土地を感じられるメディアだと本書ではいいます。
大量生産でつくられたものではなく、手間ひまかけられたものに魅力を感じるのがいまの若い世代。
そんな若い世代のニーズと、一次産業に従事する人たちがもっと儲かるべきだという信念でつくられたのがこの四国食べる通信です。

この四国食べる通信のように、縁でつながる経済の仕組み=仲間経済、とも言うべきものが出てきています。
小さな経済が小さなコミュニティになり、ソーシャルメディアによって物理的距離が問題にならなくなっていることがその背景です。

昨今、オンラインサロンが一部で流行していますが、そういった小さな経済とコミュニティの関係性は今後も面白い動きになりそうです。

ローカルヒーローたちは今後でていってしまうのか

都会の若者たちが地方に移住し、楽しく過ごす。
そんなローカルヒーローたちにとってはもはや「移住」という考えで縛ってしまうこと自体が古いのかもしれません。

近年話題となっている「関係人口」の考え方のように、
移住して1つの場所に定着するというよりも、地元を複数持つことができて、それぞれの地域に関心を持ち、喜びと悲しみをともにすることがが、幸福度が上がっていくことなのかもしれません。

本書で紹介されているローカルヒーローたちも、今後他の地域へ移動した新たな地域でローカルヒーローとなっていく可能性もあります。

これまでは、地方→都市の動き(若年層が学校を卒業後都市に移住する)があり、
その逆の動きとして、都市→地方への動き(少し経験を積んだ20-30代が活躍の場を求めて地方に移住する)が出てきました。

地方側の受け入れ力が上がってきたとき、今後は第三の動きとして、地方→他の地方、という動きも盛んになってきて、
移動が多くなってくる世の中になるのかもしれません。

ともかく、関わる地域が多くなることは本人にとってもリスクヘッジになるし、戻って来れる場があるというのは挑戦しやすいのではと思います。

今後も、ローカルヒーローたちに注目したいと思います。

(111)ぼくらは地方で幸せを見つける (ソトコト流ローカル再生論)

(111)ぼくらは地方で幸せを見つける (ソトコト流ローカル再生論)